明けがた夢をみた。
私たちは彼のアトリエだったところに集っているらしい。
そこは、芝居小屋のようなまさに陋屋で、
私たちは何人かで、なにかの共同作業をするために
短期間そこに住んでいたが、もうとうに仕舞にしたらしく、
その時の痕跡を整理するためにやってきたのだった。
白黒写真に写った通りの若いときの彼と、ぼうとしか見えぬ
現在の彼の姿が時折入れ替わった。
見慣れたものはあらかた箱に入れられ、運び出されようとしていた。
「もうずいぶんなくなったね」とわたしがいったら、彼は
「あれからずいぶん時間がたってしまったもの」といったのだった。
弦を擦る、古い映画館から流れてくるようなセンチメンタルな曲が聞こえる。
今夜はいつものJBL4312Bに換えて、ジャズでは全く聴けない
バランスの音のような気がしてしばらく使わなかった、
古い古いビクターのSX-3に繋いだ。
不思議だ。繊細で艶のある、しかも懐かしいあの時代の音が蘇ってきた。
それは何の理由かいまのところ放送がペンディングになっている、2009年の
あのCFの曲の音だ。